【始祖】東明聖王(朱蒙)[1-2]

 金蛙はこの話を聞いて不思議に思い、娘をその家の中に閉じ込めてみた。すると日光が娘を照らした。娘が移動すると、光は娘を追いかけて照らした。そうこうするうちに娘は身ごもり、五升にもなる大きな卵を産んだ。
 金蛙は卵を捨てたが、犬も豚も卵を食べなかった。道に置くと、牛馬が卵を避けて通った。野原に捨てると、鳥が翼で覆って温めた。王自ら割ろうとしたが、割ることができなかったので、卵を母親に返した。
 柳花は卵を布にくるんで暖かい場所に置いた。すると、男の子が殻を破って出てきた。 その子は体格に優れ、英明さが滲み出ていた。7歳のときには異能を発揮し、自分で弓矢を作り、射れば百発百中だった。弓射上手を夫餘の俗語で朱蒙と言ったので、金蛙王はこの子に朱蒙という名を与えた。
 金蛙王には7人の息子がいて、いつも朱蒙といっしょに遊んでいたが、あらゆる面で朱蒙に及ばなかった。長男の帯素は父である王に言った。
「朱蒙は産まれ方が普通ではありません。あれほど勇猛な者は今のうちに取り除いておかねば後の禍となりましょう」
 金蛙王は帯素の意見を聞き入れなかったが、そのかわり朱蒙に馬飼いの仕事をさせた。朱蒙は駿馬には餌を与えず痩せさせ、駄馬には餌をたくさん与えて太らせた。王は肥えた馬に乗り、朱蒙に痩せた馬を与えた。後に原野で狩猟があったが、朱蒙は矢を少ししか持たされなかったのに、はなはだ多くの獲物を倒した。

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