クマネズミとスズメバチ

科挙の殿試に合格したばかりの男がいた。
あるとき、ふたりの下級役人が挨拶にやってきて、義兄弟の杯を交わしたいと申し出た。男は二つ返事で了承した。
ある宴席で、男がふたりの下座につくのを見た友人が言った。
「どうしてアイツらより下の席に座るんだ? おまえは中央の役人だろう?」
「あのふたりのあだ名を知ってるか?」
「いいや」
「ひとりは、人に取り入るのが抜群にうまいので、クマネズミと呼ばれてる。もうひとりは、人を陥れて刺すことが得意だから、スズメバチと呼ばれてるんだ」
「なるほど分かったぞ。あいつらのことが怖くて下手に出てるんだ」
「違う、違う」
「じゃぁ、どうしてなんだよ」
「あのふたりを味方につけて政敵を討たなければ、オレの出世が望めないんだよ」

高級官僚はなるのも大変だが、続けていくのも大変だ。

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