噛み切られた耳

裁きの日。
まず、原告が言った。
「こいつに耳を噛み切られたんです!」
つぎに被告が反論した。
「こいつが自分で自分の耳を噛み切ったんです」
それを聞いた代官が、自分の耳をつまんでクルクル回り出した。
被告が代官に尋ねた。
「お代官様、何をなさってるんです?」
代官が口をカチカチ鳴らすのを中断して答えた。
「自分の耳を噛み切ってるところだよ」
被告が言った。
「ハッ、ハッ、ハッ。頭のいいお方が何をバカなことを。そんなことできるわけないじゃないですか」
正面を向いた代官が被告に言った。
「そうだよな。できないよな。とりあえず偽証罪で起訴だ!」

口数が多いと碌な事はない。口は災いの元である。

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