孤児が歩いていると、物乞いがやってきて言った。
「おまえの親はどこにいるんだい?」
孤児は面倒くさそうに答えた。
「父親はそこで畑を耕している牛で、母親はあそこで寝そべっている犬です」
物乞いが怒って言った。
「オレに学がないからって嘘をつくな。人間の子は人間の両親から生まれてくるもんだ」
「じゃあ、あなたの両親はどこにいるんですか?」
「そんなの知らないよ。オレは捨て子だったんだから」
孤児が笑って言った。
「自分の両親も知らない人が、どうしてボクの両親が牛と犬ではないと分るんですか?」
この孤児は、トンチをきかせて金持ちになるか、悪知恵を働かせて詐欺師になるかのどちらかなのだろう。