大工たちが居酒屋で酒を呑んで盛り上がっていた。
棟梁が言った。
「体について有り得ないことを話してみろ! 間違ったら酒を一気飲みだぞ」
一番目の大工が言った。
「目は前にあって幸せだ。頭の後ろについていたら、いつも首をひねって歩かなきゃならない。これじゃあ、首筋が痛くてしかたがね~や」
棟梁が膝を叩いた。
「よし! つぎ」
二番目の大工が言った。
「鼻の穴は下向きで幸せだ。もし上向きだったら、雨やホコリがいっぱい入って困っただろう。くしゃみのしっぱなしだ」
棟梁が膝を叩いた。
「よし! つぎ」
三番目の大工が言った。
「耳たぶは小ぶりで幸せだ。ウサギみたいに大きかったら、冠をかぶることができなくて不便だ。帽子の両側に穴をあけないといけない」
棟梁が膝を叩いた。
「よし! つぎ」
四番目の大工が言った。
「足の甲は前についていて幸せだ。後ろにあったら、始終踏まれて、さぞかし痛いことだろう。前へ進むのにも苦労する」
棟梁が膝を叩いた。
「よし! つぎ」
五番目の大工が言った。
「へそはお腹にあって幸せだ。首についていたら、へそのゴマがすぐたまるし、風邪をひきやすくなる。薬代がかかってしかたがねぇや」
棟梁が首をひねった。
「ん~、まあ~、よし! つぎ」
六番目の大工が言った。
「ウンコの穴はお尻にあって幸せだ。顔にあったら臭くてたまらなかっただろう」
棟梁が徳利を持ち上げて叫んだ。
「間違った、間違った。さぁ、はやく酒を呑め!」
腑に落ちない大工が尋ねた。
「親方、ど、どこが間違いなんで?」
棟梁が腕を組み直して言った。
「クソの穴が顔についてるヤツなんていっぱいいるだろぅ。オマエの女房だってそうだ」六番目の大工は、女房と言われた瞬間、自分の間違いに気づいた。
「あ~、そうか、そうか。失敗しちまった」
そう言って、大杯を呑み干した。
確かに、口臭がきつい人は、尻の穴を顔につけているようなものだ。