大のケチで知られる男は、客を招いても主菜に豆腐一丁しか出さなかった。
そのことを詰問されると、この男はいつもこう答えていた。
「私は豆腐を自分の魂と同じくらい大切にしているんです。この世にこれ以上美味いものはありません」
あるとき、男が食事に招かれた。
招待主は男の豆腐好きを覚えていて、わざわざ豆腐を加えて鴨料理を出した。
ところが、この男、豆腐を避けて肉ばかり食べる。
不思議に思った招待主が尋ねた。
「どうして肉ばかりお食べになるのですか? この豆腐はお口に合いませんか?」
男は平然と答えた。
「豆腐は魂と同じくらい好きです。でも、鴨肉は魂以上と考えております」
次にやはり豆腐が入った犬肉料理が出てきた。
男は豆腐を取り出して犬肉だけを食べた。
男の嘘に気づいた招待主は、湯豆腐を出して言った。
「さぁさぁ、魂の料理を召し上がってください」
湯豆腐を見て男が言った。
「豆腐より不味いかどうか確めたいので、次は魚料理を出してください」
魂の豆腐
