大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の第1話で、NHKには珍しく、全裸シーンがあり、ネットで話題になりました。何でもこのドラマには『インティマシー・コーディネーター』(通称『IC』)がついているとのこと。疑問に感じたので、ネットであれこれ検索してみました。
映像業界で横行していた性加害の撲滅を訴えるMeToo運動をきっかけにして海外で広まった職種で、日本では2020年のNetflix作品『彼女』で初導入されました。ヌードシーンや身体的接触シーンがある撮影現場において、出演側の心理的負担と制作側の演出意図を第三者として調整することで、撮影トラブルを未然に防ぐ役割を担う人がインティマシー・コーディネーターで、現在4名ほどいるそうです。浅田智穂さんが日本の第一人者で、インタビュー記事があちこちに掲載されています。西山ももこさんが記した『インティマシー・コーディネーター』という単行本も出ています。
日本の映画界で#MeToo運動が起きたのは2022年でした。ヒット作を飛ばしている著名な監督や有名俳優らが告発されましたが、木下ほうかさんの爆弾告発が映像業界を一変させました。問題を起こした業界人たちの多くがマイナー系だったため、ミニシアターに抗議が殺到し、上映中止に追い込まれた映画もありました。作品自体には責任がないのに、とんだとばっちりですね。映像制作を生業にしていた友人たちの証言(酒場の与太話)によると、監督の言うことは絶対で、突然脱げと指示された女優さんは言うことを聞くしかなかったそうです。逆らえばその場で解雇だから。また、前張り(陰部を隠すためのテープ)を付けないことがしばしばあったそうです。時代はすっかり変わりました。このような職業が存在するとは、昭和ど真ん中世代のボクには、頭では理解できても、感覚的な部分ではやはり多少の違和感はあります。
話は変わりますが、映画監督の立場を利用し20代の女優Aさんに猥褻な行為をしたとして準強姦罪に問われた映画監督の榊英雄被告の公判が、2024年10月16日、東京地裁で開かれました。「これから俳優としてやっていく覚悟があれば何でもやれるよな。じゃあパンツを脱げ」と言ってC子さんをホテルに連れ込んで性的暴行を加えました。A子さんに対しては、性行為中に「監督のおちんちん気持ちいいですと言え」「誰の肉奴隷だよ?」など暴言を吐き、取り調べの際には「カメラで撮影することに興奮を覚える。映画監督の性かもしれない。監督と女優という持ってはいけない関係に背徳感を感じる。雑に女優を扱うことに興奮を覚える」と返事しました(以上『供述調書』による)。被告人は典型的な異常性愛者なのでしょうが、このような人物が映画の監督をしていたとはちょっと信じられません。しかし、超有名監督の園子温氏も、性加害者として糾弾され、事実上の引退状態にあります。この事件の影響で星野源は、紅白歌合戦で歌う曲(園監督作品の歌だった)を急遽変更しました。このような問題を二度と発生させないために、インティマシー・コーディネーターの方々による頑張りを、心より応援しています。
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