山上王(在位:197~227年)は、諱を延優(もしくは位宮)という。故国川王の弟で、太祖の曾孫にあたる。王は宮(大祖大王)にそっくりだった。高句麗語で似ていることを位と言ったので名前を位宮とした。故国川王に子がなかったので、延優が王位を継承した。
故国川王が薨去したとき、王后の于氏は大喪を秘密にした。その夜、于氏は王弟の発歧の家を訪ねて言った。
「王には跡継ぎがおりません。そなたが後継者になるのがよいのではないでしょうか」
王の崩御を知らない発歧が言った。
「天の暦は巡り巡って定められた場所へ戻ります。王統について軽々しく議論なさってはなりません。ましてや、ご婦人が夜訪れることが礼儀正しい行いだといえるでしょうか」
王后は後悔し、その足で延優の邸宅を訪れた。延優は衣冠を調え、王后を門前で出迎え、宴席を用意した。
王后が言った。
「今日、大王がお隠れになりましたが、後を継ぐ王子がおりません。発歧はそなたより年長で皇位を継ぐべき者ですが、私に異心があると勘ぐり、傲慢で無礼な態度をとりました。そこで弟のあなたに会いに来たのです」
延優はさらに厚くもてなし、王后のために自ら小刀を握って肉を切り分けた。このとき、延優は誤って指先を傷つけてしまったが、それを見た王后は腰帯を解いて患部に巻いた。王宮へ帰るとき、王后が言った。
「すっかり夜が更けてしまい、不慮の事が起こるやもしれません。王宮まで送っていただけないでしょうか」
延優は従った。
王后は延優の手をとって王宮に入った。
【第10代】山上王(延優)[10-1]
