元旦の朝、女郎が年始客をつかまえようと大門の前に立っていた。
すると、男が声をかけてきた。
「一文しかないが、それでもいいかい?」
あまりにも小額だと憤慨した女郎が言った。
「何を言ってるんだ。あたしゃあ、そんなにお安くないよ!」
側で話を聞いていたヤリ手の客引き婆が言った。
「なんてもったいないことを。やっちまってから値を吊り上げればいいんだよ」
そして、男に向かって叫んだ。
「旦那さ~ん、待ってくださいよ~。一文で大丈夫ですよ~」
その声を聞いた男がつぶやいた。
「あんな婆とかかわったら、あっという間に財布がカラになっちまうよ」
安物買いの銭失いだけは避けるべきだ。