翌朝、用事があると言って嫁がまた出かけていきました。嫌な予感がしたパクチョンガは、急いで嫁を追いかけました。
龍宮へ通じる門がある川辺まで来ると、嫁が突然振り返りました。大きな目に涙をいっぱい浮かべています。
「わたしたちの縁は切れてしまいました。もう旦那様をお守りすることはできません。それではお元気で。さようなら」
「な、なにをバカなこと言ってるんだ。いっしょに暮らしはじめたばかりじゃないか。オラたちはどっちかが死ぬまでいっしょにいるんだ」
パクチョンガは嫁の手を握ろうとしましたが、嫁はその手を振り払って川へ飛び込みました。そして、赤い鯉に戻ったかとおもうと、川の奥底へ消えてしまいました。
途方に暮れたパクチョンガが家に戻ると、小人の不思議な家は消えていて、畑の作物もみな枯れていました。ふたつの行李をのぞくと、中は空っぽで小人たちの姿もありませんでした。
それから毎日、パクチョンガは川へ出かけていき、朝から晩まで龍女の嫁が現れるのを待ちました。しかし、パクチョンガの願いが叶うことはありませんでした。
ふたつの行李[10]
