ある医者が薬の処方を間違えて幼児の患者を殺してしまった。
激怒した父親が言った。
「いったいどうしてくれるんだ!」
医者はとりあえず頭を下げた。
「申し訳ありません」
しかし、父親の怒りは収らない。
「あやまったって、娘は帰ってこないんだよ!」
医者は経文を読むように言った。
「立派な葬式を出して、ねんごろに弔いますから、どうかお許しください」
いくら文句を言っても子供が生き返るわけではないので、父親はしぶしぶ了承した。
医者は幼児の遺体を薬箱に入れて持ち帰ることにした。
帰宅途中に急患が現れ、診察することになった。
医者が薬箱を開けると、中に子供の遺体が入っている。
患者の家族が驚いて尋ねた。
「どうして薬箱に死んだ赤ん坊が入ってるんですか?」
困った医者はとりあえず答えた。
「心配はご無用です」
しかし、患者の家族は食い下がった。
「心配ないと言われても、これは尋常なことではありませんよ!」
医者が苦し紛れに答えた。
「この子の親から生き返らせてほしいと頼まれて、私の診療所に連れていく途中なんです。だから、心配はご無用です」
医者と詐欺師は紙一重である。