監督:スパイク・リー
脚本:デヴィッド・バーン
制作:スパイク・リー、デヴィッド・バーン
主演:デヴィッド・バーン
撮影:エレン・クラス、デクラン・クイン
編集:アダム・ゴフ
音楽:デヴィッド・バーン日本語字幕監修:ピーター・バラカン
製作:HBOフィルム、ユニバーサル・ピクチャーズ
上映時間:105分
『アメリカン・ユートピア』(原題:David Byrne’s American Utopia)は、トーキング・ヘッズのフロントマンでグラミー賞受賞のアーティスト、デイヴィッド・バーン主演のブロードウェイ・ショーを、『ブラック・クランズマン』でアカデミー賞を受賞したスパイク・リーが映画化した作品です。同じ時代にニューヨークで活動を始めた二人が、初めて手を組み“最高のコンビ”になりました。時代を映し出す数々の問題 ―BLM、ダイバーシティ、政治など― を背景に、デイヴィッド・バーンの発想とスパイク・リーの視点が融合。その絶賛されたステージパフォーマンスを余すところなく映像作品として再現しました。
映画の原案となったのは、2018年に発表されたデイヴィッド・バーンのソロアルバム『アメリカン・ユートピア』。ワールドツアー後、2019年にスタートしたブロードウェイのショーが大評判となり、映像化の企画が持ち上がりました。2020年9月10日にトロント国際映画祭でワールドプレミア上映され、10月にはニューヨーク映画祭とBFIロンドン映画祭で上映され、翌年には米国で劇場公開されました。HBO Max(米国)とCrave (カナダ)でストリーミング配信され、ユニバーサル・ピクチャーズがその他の国でこの映画を配給しました。興行収入は275,304ドルです。本作は批評家から絶賛されました。映画批評サイト『Rotten Tomatoes』では135件のレビューに基づき98%の評価を受け、平均は10点満点中8.6点となっています。同サイトの批評家総意は「スパイク・リーがエレガントで爽快なスタイルで監督した。デビッド・バーンの『アメリカン・ユートピア』は、喜びに満ちたカタルシスの祝典を兼ねたミュージカル映画である」となっています。 また『Metacritic』では28人の批評家によって100点満点中92点の評価を受けています。
往年の『トーキング・ヘッズ』ファンなら鑑賞してすぐ気づいたと思うんですが、この作品は1983年のライブコンサートを映画化した『ストップ・メイキング・センス』(Stop Making Sense)を彷彿させます。初めデイビッド・バーンが一人で登場し、演奏が進むにつれてメンバーが増えてゆくという演出方法は全く同じです。演奏されている楽曲もかなりダブっています。『ストップ・メイキング・センス』は40年くらい前の作品で、もう知っている人も少ないと思うので、ネタバレになったりはしないと思いますが、老境に入ったバーンは何を想ってミュージカル化と映画化を進めたのでしょうか?でも作品自体は、『ストップ・メイキング・センス』を観ていなくても十二分に楽しめます。
ブロードウェイで上演されたミュージカルですから、最高にイケてることは保証します。例によってダブダブのスーツに身を包んだバーンが、一人でステージ前面に歩いてきます。靴も靴下の履いておらず裸足です。ギターを担いで歌いはじめると、打楽器を持った人たちが順番に出てきて、楽器を打ち鳴らしながら踊ります。アフリカン・ビートにのってステージは盛り上がります。ときどき、楽隊を一列に組んで、会場の通路を練り歩きます。全21曲のうち『This Must Be the Place』『Slippery People』『I Should Watch TV』『Once in a Lifetime』『Born Under Punches 』『I Dance Like This』『Blind』『Burning Down the House』『Road to Nowhere 』『The Great Curve』がトーキング・ヘッズ時代の楽曲で、ヒット曲の『Slippery People』『Once in a Lifetime』『Burning Down the House』あたりでは大盛り上がりしていたので、会場の人たちはトーキング・ヘッズのことをよく知ってるんですね。