子供の熱が下がらないので、父親が医者を呼びに行った。
医者が脈を診て言った。
「これはただの発熱ですね。心配いりませんよ」
父親は安堵した。
「そうですか。それを聞いて安心しました」
医者が瞳孔を確認して言った。
「特別な薬を調合して差し上げます」
父親が頭を下げて言った。
「よろしくお願いします」
医者が薬箱を覗き込みながら言った。
「高い薬ですが、効き目は抜群ですよ」
しかし、その翌日、子供はあっけなく死んでしまった。
怒った父親が医者のところへ文句を言いに行った。
「薬を飲めば治ると言ったじゃないか。治るどころか死んでしまったぞ。どうしてくれるんだ!」
医者が考え込むように言った。
「おかしいなぁ、あれで問題ないはずだが」
父親が叫んだ。
「このやろう、問題ないだって? 実際に息子は死んじゃってるじゃないか」
「わかりました。私が自分で調べてみましょう」
そう言って、父親といっしょに葬儀場へ向かった。
子供の遺体を見つけると、医者は触診を始めた。
全身を丁寧に撫でてから、父親に向かって言った。
「私の見立ては間違ってませんでしたよ。ほら、薬が効いた証拠に、熱が下がって冷たくなってるじゃないですか」
クスリが効いた証拠
