スズメ捕り

ある男が愛娘の婿を探していた。
あるとき、親戚がやってきて言った。
「近所にスズメ捕りを生業にしている家があるんだが、そこの息子はどうだい?」
男は喜んだ。
「スズメ捕りなら現金収入だ。オレみたいに売掛金の回収で苦労することもないから、婿にはピッタリだな」
こうして、スズメ捕り名人の息子が婿になった。
しかし、婿は毎朝仕事には出かけるが、売上金をまったく家に入れない。
しびれをきらした男は、婿の後を追って様子を見ることにした。
日の出とともに街はずれの畑に着いた婿は、父から譲り受けたという竹カゴの罠をしかけて座り込んだ。
日が暮れかけてもいっこうに動く気配がないので、男は我慢ができず、偶然を装って声をかけた。
「おやおや、婿殿。こんなところで会うなんて奇遇だねぇ。仕事のあんばいはどうだい?」
婿は大きく伸びをして、ゆっくりと口を開いた。
「オヤジ様に言われたとおりにやってるんですが、やっぱり慣れないことはするもんじゃないですねぇ」

この婿、スズメ捕り名人の実子ではあったが、弟子ではなかった。

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