ラーゲリより愛を込めて

監督:瀬々敬久
脚本:林民夫
原作:辺見じゅん『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』

英題:Fragments of the Last Will

製作:平野隆、下田淳行、刀根鉄太、辻本珠子
出演:二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人、寺尾聰、桐谷健太、安田顕
音楽:小瀬村晶
主題歌:Mrs. GREEN APPLE「Soranji」
撮影:鍋島淳裕
編集:早野亮
録音:髙田伸也
美術:磯見俊裕、露木恵美子
上映時間:133分
興行収入:26.7億円

《ストーリー》

日中戦争の最終年である昭和20年(1945年)、ロシア語が堪能で満鉄調査部に勤める山本幡男(二宮和也)は、妻(北川景子)と4人の子供たちとハルビンで暮らしていた。現地招集で兵士となった幡男は、終戦によりソ連軍の捕虜となる。妻子は日本に戻ることができたが、幡男はハバロフスク『ラーゲリ』の日本軍捕虜収容所に送られてしまう。厳寒のシベリアで強制労働させられる日本軍捕虜たちは、過酷な労働で気力を失い、帰国への希望も持てなくなる。そんな仲間たちに対して、幡男はひたすら励まし続ける。しかし、幡男は体が弱り病院で検査を受けると、咽頭癌の末期で余命は3ヵ月と診断される。死が迫る幡男に、捕虜の団長は遺書を書くことを勧める。幡男は1954年に45歳で他界し、遺書を書いたノートは没収され、日本の家族の元へ届けられることはなかった。

1956年、日本軍捕虜として辛酸をなめた同胞たちが、日本の土を踏んだ。そして、翌年から一人また一人と幡男の家族の元を訪ね、記憶して来た幡男の遺書の内容を伝えた。収容所では日本語の書類は没収されるので、仲間たちは幡男の遺書を分担して暗記していたのだ。妻と4人の子供たちは、幡男による心のこもった最期の言葉を聞いて、幡男が離ればなれになっている間も、常に家族の先行きのことを考えていたことを知り、感むせぶしかなくなってしまうのであった。

本作は、辺見じゅんが書いたノンフィクション作品『収容所から来た遺書』(文春文庫)が原作で、映画はほぼ原作に忠実につくられています。この本は当時(1990年)ボクも読みました。大宅壮一ノンフィクション賞を獲ったからです。ノンフィクションというと、たいていは著者が関係者に取材して作り上げるものですが、この本は角川書店(辺見じゅんは角川書店創業者の長女)が戦争体験談を募集して集まってきた実話の中から選ばれたネタそのものなのです。同胞が遺言を暗記して語りに来たなんて出来すぎた話にしか思えないですが、本当に本当の実話なんです!

シベリア抑留を題材にしたドラマや映画はたくさん制作されましたが、21世紀に入ってからこの題材が映画化されるとは想像していませんでした。しかも、20億円を大きく超える興行収入の映画になるとは。驚きが隠せません。これなら、『ノモンハン戦争』(司馬遼太郎が従軍していて、村上春樹も著書をあらわしている)をテーマした映画もイケるんじゃないかと思いました。個人的な意見を言わせていただくと、ボクなら強制収容所の部分は前振りにして、生還した同僚たちが遺書の内容を熱く語る部分をもっと丁寧に描写したらよかったかなぁと思いました。最後の結婚式のシーンもやや蛇足で、生き残った仲間たちが帰国後にどんな生活を送ったかをオムニバス的に紹介してくれたら、感動がより深まった気がします。

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