先日、新宿区の高田馬場で旧友の集まりがあり、多摩からわざわざ足を運びました。集合場所は決まっていて、さかえ通り商店街にある『鳥やす』。ここに適当に集まって飲み交わすのが昔からの習慣です。40年前に比べると店は若干広がっていますが、雰囲気はまったく変わっていません。酒は焼酎の一択。今ならお湯割りですね。誰かがボトルを入れているので、それを勝手に飲みます。肴は焼き鳥ともつ煮込み。暑いときは生ビールと冷や奴です。締めはここから徒歩15分のところにある『えぞ菊』。味噌ラーメンが絶品で、半世紀の歴史が丼に詰まっている(気がします)。
閑話休題。最近、巷で話題になっている『髙田馬場の中国化問題』。ボクが若かった頃、髙田馬場で中国人を見かけたことは皆無です。学内に留学生がちらほらいるくらいでした。当時、中国人といえば大久保界隈でした。大久保通りには中国レストランが並んでチャイナタウン状態でした(今はコリアンタウン)。飲みの場に大学の職員や髙田馬場で働いているヤツがいたので、酔った勢いで根掘り葉掘り実態を聞いてみました。話を要約すると、中曽根内閣の留学生10万人計画の影響で、髙田馬場(新宿全域を含む)に中国語圏外国人(中国、香港、台湾等々)向けの日本語学校ができはじめ、その発展形で中国人向けの進学予備校が増えていきました。
予備校といっても日本の予備校とは似て非なるもので、予備校に入学してくるのはバリバリの高校生。中国人向けの進学予備校は高校も兼ねていて、高校のカリキュラムをこなしながら、早稲田大学や慶応大学への進学準備を進める。留学費用も、欧米に比べれば格安なので、小金持ちくらいの親なら、子供を東京の高校へ出すことができます。現在、早稲田大学の留学生の半数が中国人で、その多くが髙田馬場界隈に住んでいます。そのため、中国人をターゲットにした飲食店や不動産会社が数多くあり、髙田馬場が中国人であふれかえっているというわけです。
ただ、ボクの最大の疑問は、『どうして髙田馬場なの?』ということ。目白や駒込ではダメなの?そこで、得意のネットで調べてみました。同じ疑問を持つライターが多いんですね。中国人へのインタビュー記事がたくさん掲載されていました。髙田馬場で事業を始めるいちばんの理由は、賃貸料が安いことだそう。もちろん絶対的金額は高いです。日本の学生は家賃が高すぎて高田馬場や早稲田には住めないから、たいてい西武新宿線の駅チカに住んでいます。『安い』という意味は、新宿や池袋と比べてリーズナブルであるということです。
それから、中国人どうしのしがらみが少ないことも魅力のようです。中国人コミュニティーの結束が固いことは以前から有名ですが、高田馬場で働く中国人はみな若くて現代的な考えの人が多く、互いに緩やかにつながっています。でも、これが新宿や池袋に行くと、長老たちの締め付けが厳しく、横のつながりをメインにすることができません。元々、高田馬場は学生街なので、昔から肩を組んで歩きましょうみたいな雰囲気がありました。そういった環境が中国人にとっても心地よいのかもしれません。
聞いたところによると、高田馬場には『ガチ中華』(中国人シェフが作る中国人向けの中国料理)のお店がたくさんあるそうですから、今度行ったときには人気店に突入してみようと思います。