同じ年に科挙に合格した人たちは『同年』と呼び合い、一生の友として付き合い、互いに助け合った。
また、科挙に合格した人の両親は『封君』と呼ばれて尊敬された。
あるとき、県主催の宴会が催された。
県知事は同年の封君たちも招いた。
末席に座ろうとする老夫婦を見て県知事が言った。
「どうぞ上座へお着きください」
父親が慌てて顔を伏せた。
「県知事様、とんでもございません。わたしどものような庶民は末席を汚すだけで光栄でございます」
母親が顔を伏せたまま言った。
「トンビがタカを産んだだけでございまして、このような席にお招きいただき、本当にありがとうございます」
県知事が諭すように言った。
「なにをおっしゃいます。私は息子さんの同年でございます。さ、さ、遠慮せず、こちらにお座りください」
父親が笑顔で言った。
「ということは、県知事様も息子と同じイヌ年でございますね」
同じ宴会の席に庶民の封君がもう一組いた。
母親は暑くなり、備え付けの団扇で顔を仰いだ。
「こんな立派なものが無造作に置いてあるなんて、さすが県知事様のお屋敷ね」
そこへ料理が運ばれてきた。
母親は当たり前のように団扇を懐へ仕舞い込んだ。
県知事は見て見ぬふりをするしかなかった。
同年と封君
