閻魔大王が部下の鬼に命じた。
「急患が出たから優秀な医者をすぐに連れてこい!」
部下の鬼が尋ねた。
「大王様、いったいどうやったら優秀な医者を見つけることができるんですか?」
閻魔大王がイライラしながら言った。
「おまえは阿呆か。診療所の門前に行けばすぐ分かるじゃないか」
鬼はまだ理解できなかった。
「それは、いったいどういう意味ですか?」
閻魔大王が噛んで砕くように説明した。
「成仏していない霊がたむろしてたら、そこはヤブ医者の医療所だ。優秀な医者がいるところには浮かばれない霊が少ない。分かったか?」
「なるほど、なるほど。さすがは大王様だ」
人間界に行った鬼はあちこち探し回ったが、どこの門前も恨めしそうな霊であふれていた。
疲れた足で千軒目の診療所に行くと、そこには亡霊が五人しかいなかった。
鬼は小躍りした。
「名医をやっと見つけた!」
ここの医者は優秀に違いないと考えた鬼は、寝ている医者をさらって閻魔大王のもとへ連れていった。
首を長くして待っていた閻魔大王が医者に尋ねた。
「そちは優秀な医者だそうだな」
医者はビクビクして答えた。
「いいえ、そんなことはありません」
しかし、閻魔大王は信じない。
「謙遜するでない。この鬼から優秀だという報告を受けておるぞ」
医者が平身低頭して答えた。
「いいえ。私は今日開業したばかりの新米医でございます」
名医の探し方
