大学生の証明問題

ある日、武官が夜勤をしていた。
深夜になって、門番が若者をしょっぴいて来た。
「城門の前で不審者を見つけたので連れてまいりました」
武官が若者を詰問した。
「おまえは何者だ」
「城内の大学に在籍している学生です。どうか見逃がしてください」
「大学生のくせに夜間外出禁止令が出ているのを知らんのか!」
「もちろん知っていますが、今日は遠くへ試験を受けに行って、帰りが遅くなってしまったんです」
武官は疑うような目で若者をにらみつけた。
「おまえは本当に学生か? 嘘をついてるんじゃないのか?」
「大学生です! 間違いなく本城の大学の学生です」
武官はさらに若者を挑発した。
「信じられんな。本物だというなら証拠を見せてみろ」
若者はしばらく考えてから答えた。
「真夜中に先生や同級生を呼ぶわけにもいきませんから、なにか難しい問題を出してください。そうすれば私が大学生だとわかるはずです」
武官は納得した。
「では問題を出すぞ。準備はできたか?」
目をつむった若者が答えた。
「どうぞ」

しばらくして。
武官は一所懸命に問題を考えたが、大学生が頭を悩ますような質問は思い浮かばなかった。
当たり前である。
勉強が大嫌いだからこそ、親の金とコネで武官になったのだ。
そのことに気づいた武官はコホンと咳払いをした。
「今日のおまえは運がいいぞ」
若者が不思議そうな顔で尋ねた。
「なぜですか? こんな状況で運がいいとは、とても思えないんですが」
武官はまた咳払いをした。
「オレの問題は難しすぎて、大学生でも答えられないかもしれない。もし間違えば、おまえは確実に牢屋行きだ。それじゃぁあまりにもかわいそうだから、今日はコイツが問題を出す」
そう言って、武官は側に控えていた門番を指差した。
急に指名された門番はおおいに焦ったが、それでもなんとか問題を思いついた。
最近話題となっている豊臣秀吉軍の侵攻を問題にすれば、この場はまるく収まるはずだ。「で、では、問題を出します。蒙古の南には遼東(現在の遼寧省一帯)が、遼東の南には朝鮮(李氏朝鮮)がありますが、さらにその南にある国は?」
若者は余裕ありげにもったいぶって答えた。
「地理の問題ですね。ん~、あぁ、思い出した! 朝鮮の南は女真(現在の黒龍江省一帯)ですよ、女真。間違いありません」
若者の回答にあきれ果てた門番はガクッと頭を垂れた。
しかし、門番がうなだれる様子を見て、武官はそれが正解のサインだと勘違いした。
「ご名答! いますぐ帰ってよろしい!」

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