行商に出ていた男がひさしぶりに遊郭へ行き、なじみの芸子を呼んだ。
芸子が男の胸にしなだれかかって言った。
「ずっとさみしかったんですよ。あなたと別れてから毎日あなたの夢を見ていました」
「そうか、そうか。オレも毎晩おまえの夢を見ていたよ」
「どんな夢ですか?」
「おまえがオレの夢なんか見ていなかったという夢だよ」
「それはそうですよ」
「どういう意味だい?」
「わたしがあなたの夢を見ていたのは、お昼寝のときですから」
女郎と客の夢

行商に出ていた男がひさしぶりに遊郭へ行き、なじみの芸子を呼んだ。
芸子が男の胸にしなだれかかって言った。
「ずっとさみしかったんですよ。あなたと別れてから毎日あなたの夢を見ていました」
「そうか、そうか。オレも毎晩おまえの夢を見ていたよ」
「どんな夢ですか?」
「おまえがオレの夢なんか見ていなかったという夢だよ」
「それはそうですよ」
「どういう意味だい?」
「わたしがあなたの夢を見ていたのは、お昼寝のときですから」