【碑文】
國𦊆上廣開土境好太王、存時敎言。
祖王先王、但敎取遠近舊民、守墓洒掃。吾慮舊民轉當嬴劣。若吾萬年之後安守墓者、但取吾躬巡所略来韓穢、令備洒掃。
言敎如此、是以如教令取韓穢二百廿家。慮其不知法則、復取舊民一百十家。合新舊守墓戶、國烟卅、看烟三百、都合三百卅家。
自上祖先王以来、墓上不安石碑、致使守墓人烟戶差錯。惟國𦊆上廣開土境好太王、盡為祖先王墓上立碑銘、其烟戶不令差錯。
又制守墓人、自今以後、不得更相轉賣。雖有富足之者、亦不得擅買其。有違令、賣者刑之、買人制令守墓之。
【訳文】
国𦊆上広開土境好太王が、生前に詔を発しておっしゃられた。
「祖王、先王は遠近の旧民を徴発して陵墓を守護、洒掃させるだけだった。我は旧民の様子が変わって劣り弱っていることを憂慮している。もし我が万年先に守墓者に安んぜられるには、我自らが経巡って連れてきた韓と穢の民を採用して、洒掃に備えさせるだけである」
このようにおっしゃられたので、詔に従って韓族と穢族から220家を徴発した。(しかし韓穢の民が)守墓人としての規範を知らないことを考慮して、また別に旧民110家を徴発した。新旧の守墓戸を合わせて、国烟が30家の、看烟が300家、都合330家となった。
上祖先王以来、陵墓に石碑を安置せず、守墓人である烟戸を誤ったままにさせておいた。ただ国𦊆上広開土境好太王だけが、先王たちのために石碑を立てて(守墓人を)銘記し、烟戸に間違いを犯させないようにした。また、守墓人に関する詔を発して(注意を促した)。
「今後、互いに転売してはならない。富裕者といえども好き勝手に買い取ってはならない。違反があった場合、売った者は刑罰に処し、買った者は本人に守墓させる」
【解説】
石碑を建立した目的が記されている。
『広開土王碑』は、広開土王の功績を後世に残すために造られたわけではない。石碑に守墓人の名簿を銘記することで、烟戸が入り乱れたり、売買されて散逸しないようにしたのだ。