日本から渡来した昔氏の始祖伝説[上]

 『三国遺事』では、日本と深く関わる昔氏の始祖伝説を、次のように語っている。

 第二代南解王の時代、駕洛国の領海に船があった。
 首露王と臣民は大騒ぎで迎えたが、係留しようとすると船は走り去り、鶏林の東の下西知村阿珍浦に入港した。
 浜辺に阿珍義先という名の老婆がいたが、船を見て、
「この海には岩石などないはずじゃが、どうして鵲が集まって鳴いているじゃろう?」
 と言い、舟を漕いで行ってみると、鵲が一艘の船の上で群れていた。船には長さ20尺、幅13尺の棺がひとつ置かれていた。
 老婆は船を浜まで曳いていき、棺を林の中に置いた。凶吉が定かでないため、急いで天に祈りを捧げたうえで棺を開けた。
 中には見目麗しい男の子が寝ており、棺の中は宝物と奴婢で満たされていた。
 食べ物を与えて7日すると、その子が初めて口を開いた。
「私は龍城国の王子で、祖国は倭の北東一千里の彼方にあります。
 我が国ではかつて28人の龍王が人から生まれ、5、6歳で王位に就き、万民を善なる道へ導きました。王の候補者は争うことなく、みなが順に即位しました。
 我が父王の含達婆は、積女国の王女を妃としましたが、長らく継嗣がないので、祈祷によって跡継ぎを求めました。
 7年後、王妃が大卵を産んだため、父王は群臣を集めて問いました。そして、人が卵を産むなど古今例のないことで瑞祥のはずがない、ということになりました。そこで、棺を作り、私を七宝や奴婢といっしょに入れて船に載せたのです。
 父王は船を海に流すとき、どこか縁ある土地へ行って国を建てなさいとおっしゃいました。すると、赤龍が現れ、私をここまで守り導いてくれたのです」

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