女郎と客がねんごろになり、毒をあおって心中することになった。
女郎が甘えるように言った。
「おまえさまが先にお飲みください」
客は毒薬を一気に飲みほした。
「さあ、おまえも飲みなさい」
すると、女郎が腕まくりして言った。
「では、藤八拳(野球拳)で勝負しましょう。負けたら飲みますよ~」
「そうか、そうか。最期の一興ってやつだな。よし!」
女郎が楽しそうに言った。
「では、いきますよ~」
女郎が歌いはじめたとたん、男が口から泡を吹いて倒れた。
女郎は客の財布を持って、脱兎のごとく逃げ去った。
女郎と心中しようなんて考える男はみな阿呆である。