あるとき、泥棒が貧乏人の家へ盗みに入った。
いろいろ物色したが、素焼きの壺に入った米しか見つからなかった。
泥棒は上着を脱いで床に広げ、そこへ米をあけようとした。
そのとき、寝たふりをしていた貧乏人が「泥棒!」と叫んだ。
泥棒が慌てているすきに、貧乏人が上着を引っ張って敷き布団の下に隠した。
泥棒が足元を見ると、置いたはずの上着がなくなっている。
「おまえが盗ったんだろ!」
泥棒はそう言って、掛け布団を剥ぎ、貧乏人のわき腹を蹴った。
しかし、布団の中に上着はなかった。
泥棒はつぶやいた。
「本当に泥棒が入ったんだ」
泥棒の泥棒
