父の功徳

たいして頭が良いわけでもないのに科挙の殿試に合格した若者がいた。
初登庁した日の夜、夢の中に閻魔大王が現れて言った。
「これから真面目に勤め上げるのだぞ」
若者がつねづね疑問に思っていたことを尋ねた。
「閻魔様、わたくしなんかがどうして最高級の試験に合格したんでしょう?」
閻魔大王が笑いながら答えた。
「それは、おまえの父親が大変な功徳を積んだからじゃ」
若者が首をかしげながら尋ねた。
「功徳? 功徳といっても、死んだ父は一介の医者に過ぎませんでしたから、大金を寄付できたなんて思えませんが…」
閻魔大王が真顔で答えた。
「そうではない。おまえの父は、医者であるにもかかわらず、患者に一度たりとも薬を飲ませなかったのじゃ。そのおかげで何人の命が救われたことか」

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