犬のスープ

都の貧民窟に寝たきりの物乞いがいた。
あるとき、仲間がお見舞いに来て言った。
「ほら、犬のスープを持ってきてやったぞ。滋養強壮にはこれがいちばんだ」
しかし、物乞いは首を振って言った。
「オレは犬年生まれだから、犬は食べないんだ」
仲間があきれ顔で言った。
「そんなこと言っても、これを飲まないと死んじまうぞ。それでもいいのか?」
物乞いは頑固だった。
「このまま死んだとしても、犬肉だけは絶対に口にしない」
仲間が笑って言った。
「おまえが犬を食べなくても、犬たちは戸口でおまえが死ぬのを待ってるぞ」

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