象のような豚

都で小役人をしている男がいた。
ある日、ベトナムから献上された象が街中を練り歩いているのを見てつぶやいた。
「豚があれくらい大きいといいんだがなぁ」
それを聞いて、いっしょに見物に来ていた友人が尋ねた。
「なんでそんなふうに思うんだい?」
男は象を見つめたまま答えた。
「だって考えてみろよ。オレたちみたいな小役人がおこぼれにあずかれるのは、孔子様を祭るときくらいだろう?」
「そういえばそうだな」
「お下がりの豚肉に余分があったら、それを売って生活の足しにすることができるじゃないか」
「そういえばそうだな」
「豚が象くらい大きかったら、食べるものに苦労することはないぞ」
「そういえばそうだな」
「肉を売った金で子供に服を買ってやることもできるんだぞ」
「そういえばそうだな」

庶民の夢は慎ましい。

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