ドケチで有名な商人が肖像画を描いてもらうため貧乏画家の元を訪れた。
商人が戸口で叫んだ。
「お~い、仕事を持ってきてやったぞ~」
画家が出てきて言った。
「どういった仕事ですか?」
「今日はワシの絵を頼む」
「わかりました。材料費別で八分になります」
商人が怒鳴り出した。
「な、なにを言ってるんだ。いつも仕事を斡旋してやっているのに。ワシから金をとるのか?」
画家が恐縮しながら言った。
「い、いや、でも、毎回斡旋料をお支払いしていますが…」
「だから金を払わんとは言っておらん。もろもろコミで三分は出してやる」
画家はしぶしぶ承諾した。
数日後。
画家が出来上がった肖像画を持って商人の店へやってきた。
「描き終わりましたのでお届けにあがりました」
商人が絵を広げて画家に尋ねた。
「肖像画は顔が命のはずだが、どうして後ろ姿が描かれてるんだ?」
画家がニヤリとして答えた。
「あなた様は世間に顔を見せないほうがよろしいんじゃないかと思ったものですから」
画家の返事を聞いていた店の者たちが大笑いした。
商人は顔を真赤にして奥へ逃げ込んだ。
節約はいいが、ケチはいただけない。とくにドケチは人から恨まれる。