ふたりの老人が世間話をしていた。
「おたくのご子息が郷試(【註1】)を受けられたと聞きましたが」
「そうなんですよ」
「それで受かったんですか?」
「それはもう。八方手を尽しましたから」
「おめでとうございます。これで一生安泰ですな」
「担当の試験官がしきりに首を動かしていたそうですから、息子の出世も早そうです」
「それで、どんなふうに動かしていたんですか?」
「はい、しきりに左右に振っていたそうです」
こんな阿呆でも金さえあれば受かってしまうところが怖い。
【註1】科挙(官僚登用試験)の第一次試験。3年に一度行われ、合格すると挙人と呼ばれ、地方公務員になることができた。なお、この前に学校へ入学するための童試(県試→府試→院試)がある。