銀の馬桶

昔の中国では、家の中に『馬桶』(マートン)という壺が置いてあり、それをオマルとして使っていた。
ある日、男が銀細工屋に来て言った。
「小さくていいから、銀製の馬桶を作ってくれ」
不思議に思った店主が言った。
「馬桶なんて陶器でじゅうぶんじゃないですか」
男は首を振った。
「いいや、銀じゃなきゃダメなんだ」
納得できない店主が尋ねた。
「どうして銀製じゃなきゃならないんです?」
男が手を震わせながら答えた。
「昨日、毒を盛られて死にかけたんだよ!」
店主が驚いて叫んだ。
「えっ、なんですって!」
男が話を続けた。
「毒が入ってれば銀が変色するから、出したときにすぐ分かるだろう?」
店主が男に聞こえないようにつぶやいた。
「お腹を通ったあとに分かったって手遅れだよなぁ」

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