4年(21年)冬12月、王は夫餘を討つため出兵し、沸流水(渾江)に陣を張った。
王が川辺を望み見ると、少女が鼎(煮炊き用の三足器)で遊んでいるように見えた。近寄ってみると、鼎だけが置かれていた。これで炊事をすると、火を使う必要がなかった。鼎は自然に熱くなり、兵士全員の食事を一度に作ることができた。
そのとき、壮漢が突然現れて言った。
「その鼎は我が家の家宝だったのですが、妹が失くしてしまったのでございます。しかし今は大王のもの。その鼎を背負って従軍させていただけないでしょうか」
王は男に負鼎という氏を授けた。
利勿林に行き着いて宿営したところ、夜中に金物を叩く音がした。夜明けに音の出所を探すと、金印や武具などが出てきた。王はこう言って拝受した。
「これらは天からの授かり物(青銅・金・鉄は北方騎馬民族の三種の神器)である」
進軍途中、顔面蒼白で目が鋭く輝いている九尺丈の男が王の前に現れ、拝謁して言った。
「私は北溟の者で怪由と申します。大王はこれから夫餘を討伐するとうかがいました。従軍することをお許しください。どうか私に夫餘王の頭を取らせてください」
王は喜んでこれを許した。
また、別の男が現れて言った。
「私は赤谷の者で麻盧と申します。この長矛で先導させてください」
王はまたこれを許した。
【第3代】大武神王(無恤)[3-2]
