川の中には別世界が広がっていました。
虹色の大門をくぐって中に入ると、眩いばかりに輝く華麗な宮殿が建っていました。これがウワサに聞く龍宮に違いない。パクチョンガはそう思いました。
それを察したかのように嫁が言いました。
「わたしの両親はここに住んでいます」
「ここは龍宮なのか?」
「人はそう呼んでいるようでございます」
「やっぱりそうか。じゃあ、おまえは龍女なんだね」
「そういうことになります」
「そうか、そうか。あのとき、おまえを食べなくて本当によかった」
「旦那様、よく聞いてください」
「なんだい?」
「わたくしの両親が望みの品をくれるはずです。欲しいものはと尋ねられたら、部屋の隅に置いてある小さな行李が欲しいとお答えください」
「わかった。おまえの言うとおりにしよう」
パクチョンガと嫁の龍女は、龍宮の家来に案内され王の間に入りました。龍王は玉座から立ち上がり、ふたりに駆け寄りました。
「よく帰ってきた。本当によく帰ってきた」
王はふたりを抱き寄せ、大粒の涙を流しました。
「王女が網にかかって獲られてしまったと聞き、死んだとばかり思っていたんじゃ」
龍女は、愛しそうに父の手を撫でました。
「お父様、わたしは無事でございます。このかたに助けていただき、今いっしょに暮らしております」
「そうか、そうか。それはなによりじゃ」
ふたつの行李[6]
