ある日、嫁が使いに出たすきに、パクチョンガはもうひとつの行李の蓋を開けてしまいました。しばらくすると、行李のすき間からまた小人たちが出てきました。
「なんだ、また小人なのか」
パクチョンガは、とてもがっかりしました。
しかし、今度の小人たちは畑仕事をしませんでした。そのかわり、山から木を切り出してきて庭に家を建てはじめました。あっという間に出来上がった家は、不思議なことに地面から浮いていて、庭先で雲のように漂っていました。
パクチョンガがその様子を呆然と眺めていると、用事をすませた嫁が戻ってきました。ふわふわ浮いている家を見た嫁は、顔を曇らせたかとおもうと、急に涙を流しはじめました。
「旦那様はもうひとつの行李を開けてしまわれたのですね」
「そ、そうなんだよ。そしたら、また小人が出てきて、今度は不思議な家を建てたんだ。すごいなぁ、本当にすごいなぁ」
嫁が家に向かって手をかざすと、家から梯子が降りてきました。嫁は梯子を伝って家に入りました。パクチョンガは、あわてて嫁を追いかけました。
小人がつくった不思議な家は、雲の高さまで上がり、大鳥が羽ばたくように広い大空を駆け巡りました。
「この家は、とんでもないしろもんだ。鳥のように空を走ることができる。おまえや、下を見てごらん。人なんか小さすぎて見えやしない。大河だって釘で書いた線みたいに細いや。さすが行李の小人がつくったものだ」
ふたつの行李[9]
