前期 B.C.7000年頃~B.C.5000年頃
新石器時代前期に入ると各地で独自の文化が芽生え始める。
中国では土器様式を時代別地域別に分類して、各グループを『○○文化』と名づけている。黄河上流域には『老官台文化』が、黄河中流域には『裴李崗文化』『磁山文化』が、黄河下流域には『後李文化』が、長江中流域には『彭頭山文化』が、長江下流域には『跨湖橋文化』が、遼河流域には『興隆窪文化』が花開いた。
裴李崗文化の墓地では男女で副葬品の種類に違いがあり、性差による分業があったことが分かる。また、被葬者によって副葬品の量が異なっており、社会的地位に差があったことがうかがえる。
以下、前期の各文化をみていこう。
●北辛文化
山東省滕県にある北辛遺跡を指標とする新石器時代前期~中期の文化グループ。年代はB.C.5500年頃~B.C.4500年頃。後李文化を発展させ大汶口文化へと引き継ぐ役割を果たした。磨製石器の石鎌・石鑿・石臼が見つかっており、アワを挽いて粉食としていたことが判明している。土器は紅陶がほとんど。鳥の足のような符号が描かれた土器が発見されていて、漢字の原型ともいわれている。
●北辛遺跡
山東省滕県にある新石器時代前期~中期の遺跡。1964年に発見された。年代はB.C.5500年頃~B.C.4500年頃。黄褐陶という黄褐色の夾砂紅陶土器が出土することで知られている。また、鳥の足のような符号が刻まれた土器片が発見され、甲骨文字の原型ではないかと話題になった。出土物は滕県博物館で見学することができる。
●磁山文化
磁山遺跡を指標とする新石器時代前期の文化で、裴李崗文化の次にあたる。一般的にはB.C.5500年頃~B.C.5000頃とされているが、中国ではB.C.6000年~B.C.5500年に比定されている。河北省では、磁山文化の遺跡が5カ所発見されていて、前磁山文化ともいえそうな、磁山文化と類似する新石器時代早期の遺跡も見つかっている。
●磁山遺跡
河北省武安県磁山にある新石器時代前期の遺跡。磁山文化の指標となっている。1973年、調査が行われ、竪穴式住居跡や窖穴が発見された。ブタ、イヌ、ニワトリを飼い、アワを栽培し備蓄していた。魚、亀、鹿、鳥の骨が大量に出土することから、農業ではなく狩猟と漁労が生活の糧だったと思われる。土器は、手でこねる原始的な方法で作られた。焼成温度も1000℃未満で、脆く壊れやすい。