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神話と民話

ふたつの行李[10]

翌朝、用事があると言って嫁がまた出かけていきました。嫌な予感がしたパクチョンガは、急いで嫁を追いかけました。 龍宮へ通じる門がある川辺まで来ると、嫁が突然振り返りました。大きな目に涙をいっぱい浮かべています。「わたしたちの縁は切れてしまいま...
神話と民話

ふたつの行李[9]

ある日、嫁が使いに出たすきに、パクチョンガはもうひとつの行李の蓋を開けてしまいました。しばらくすると、行李のすき間からまた小人たちが出てきました。「なんだ、また小人なのか」 パクチョンガは、とてもがっかりしました。 しかし、今度の小人たちは...
神話と民話

ふたつの行李[8]

こうして、パクチョンガは龍宮で夢のような日々を過ごしたあと、龍女の嫁といっしょに自分の家へ帰りました。 パクチョンガは、小さな行李になにが入っているのか知りたくなりました。 しばらくは我慢して居間の棚に置いたままにしていましたが、行李の中身...
神話と民話

ふたつの行李[7]

パクチョンガが、龍王の面前で跪きました。「はじめてお目にかかります。結婚のご挨拶が遅れ、まことに申し訳ありません。わたくしはパクと申します。龍女様を幸せにいたしますので、どうかご安心ください」「婿殿、立って顔をよく見せておくれ」 龍王はそう...
神話と民話

ふたつの行李[6]

川の中には別世界が広がっていました。 虹色の大門をくぐって中に入ると、眩いばかりに輝く華麗な宮殿が建っていました。これがウワサに聞く龍宮に違いない。パクチョンガはそう思いました。 それを察したかのように嫁が言いました。「わたしの両親はここに...
神話と民話

ふたつの行李[5]

次の日の朝、パクチョンガが目を覚ますと、味噌汁の香りが漂っていました。起き上がって台所を見ると、嫁が朝ごはんの仕度をしていました。新郎が起きたことに気づいた嫁が、パクチョンガに微笑みます。「旦那様、おはようございます。もうすぐご飯の用意がで...
神話と民話

ふたつの行李[4]

美しい娘は、悩みを抱えたような暗い顔をしています。「勝手なお願いであることは承知していますが、どうかこのまま見逃していただけないでしょうか。助けていただいたご恩はけっして忘れません。川に帰してくだされば、それ相応のお礼はさせていただきます」...
神話と民話

ふたつの行李[3]

しかし、次の日も、また次の日も、そのまた次の日も、帰ってくると晩ご飯が用意されているのでした。誰が作ってくれるのか気になったパクチョンガは、出かけるふりをして裏庭にそっと隠れ、家の中を見張ることにしました。 夕方までじっとして待っていました...
神話と民話

ふたつの行李[2]

家に着いたパクチョンガは、魚が新鮮なうちにさばいてしまおうと思いました。 ひとつしかない包丁を取り出して、貴重な鯉をまな板にのせました。しかし、ウロコをとろうと包丁を握り直したとき、鯉の澄んだ目がなにかを訴えているように思えてきました。「も...
神話と民話

ふたつの行李[1]

むかしむかし、パク(朴)という姓の百姓が住んでいました。家族や親戚もなく一人で暮らしながら、畑仕事を手伝ったり薪を拾ったりして生計を立てていました。村の者は彼のことを、独身のパクという意味で『パクチョンガ』と呼んでいました。 ある日、パクチ...