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神話と民話

ふたつの行李[7]

パクチョンガが、龍王の面前で跪きました。「はじめてお目にかかります。結婚のご挨拶が遅れ、まことに申し訳ありません。わたくしはパクと申します。龍女様を幸せにいたしますので、どうかご安心ください」「婿殿、立って顔をよく見せておくれ」 龍王はそう...
神話と民話

ふたつの行李[6]

川の中には別世界が広がっていました。 虹色の大門をくぐって中に入ると、眩いばかりに輝く華麗な宮殿が建っていました。これがウワサに聞く龍宮に違いない。パクチョンガはそう思いました。 それを察したかのように嫁が言いました。「わたしの両親はここに...
神話と民話

ふたつの行李[5]

次の日の朝、パクチョンガが目を覚ますと、味噌汁の香りが漂っていました。起き上がって台所を見ると、嫁が朝ごはんの仕度をしていました。新郎が起きたことに気づいた嫁が、パクチョンガに微笑みます。「旦那様、おはようございます。もうすぐご飯の用意がで...
神話と民話

ふたつの行李[4]

美しい娘は、悩みを抱えたような暗い顔をしています。「勝手なお願いであることは承知していますが、どうかこのまま見逃していただけないでしょうか。助けていただいたご恩はけっして忘れません。川に帰してくだされば、それ相応のお礼はさせていただきます」...
神話と民話

ふたつの行李[3]

しかし、次の日も、また次の日も、そのまた次の日も、帰ってくると晩ご飯が用意されているのでした。誰が作ってくれるのか気になったパクチョンガは、出かけるふりをして裏庭にそっと隠れ、家の中を見張ることにしました。 夕方までじっとして待っていました...
神話と民話

ふたつの行李[2]

家に着いたパクチョンガは、魚が新鮮なうちにさばいてしまおうと思いました。 ひとつしかない包丁を取り出して、貴重な鯉をまな板にのせました。しかし、ウロコをとろうと包丁を握り直したとき、鯉の澄んだ目がなにかを訴えているように思えてきました。「も...
神話と民話

ふたつの行李[1]

むかしむかし、パク(朴)という姓の百姓が住んでいました。家族や親戚もなく一人で暮らしながら、畑仕事を手伝ったり薪を拾ったりして生計を立てていました。村の者は彼のことを、独身のパクという意味で『パクチョンガ』と呼んでいました。 ある日、パクチ...
神話と民話

熊から人になった先祖

むかしむかしのこと。天上界に天神ファンイン(桓因)が住んでいた。 息子のファンウン(桓雄)はいつも人間界のことを気にかけ、父の許しさえ出れば下って人間たちを幸せにしてあげたいと思っていた。 息子の気持ちを察したファンインが見下ろしてみると、...
神話と民話

穴から出てきた先祖

むかしむかし、耽羅(済州島)には人が住んでいなかった。 あるとき、漢拏山の北麓にある毛興穴地中から三人の神が現れた。長男を良乙那、次男を高乙那、三男を夫乙那といった。このうち、高乙那が高氏の始祖である。三人は漢拏山で狩りをし、獣の皮で服をつ...
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金の箱から出てきた先祖

新羅国第四代脱解王の時代、瓢公が月城の西里を歩いていると、鶏林(雉林、鳩林ともいう)の中から光が漏れているのが見えた。林に行ってみると、天から紫色の雲が垂れ下がり、一本の木の枝に小さな金色の箱が引っかかっていた。光は箱から出ており、その下で...