監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬
製作:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬、柳井康治
製作総指揮:役所広司
出演者、役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、三浦友和、田中泯
撮影:フランツ・ルスティグ
編集:トニ・フロッシュハマー
上映時間:124分
興行収入:13.3億円(世界では約2570万ドル)
〈ストーリー〉
東京スカイツリー近くの寂れたアパートに住むトイレ清掃員の平山(役所広司)は、早朝から渋谷区内の公共トイレをまわって丁寧に便器を磨き上げていく。一方で、若い同僚のタカシ(柄本時生)は、遅刻の常習犯で作業も適当。ガールズ・バーのアヤ(アオイヤマダ)と深い仲になりたいが先立つモノがない。予定していたトイレの掃除が終わると、銭湯で身体を洗って、大衆食堂で食事をとり、帰宅して布団の中で文庫本を読む。これが平山の日課だ。平山の趣味は写真撮影で、休日にはカメラ屋で現像したフィルムを受け取り、古本屋で好みの文庫本を探す。和装の女将(石川さゆり)が営む居酒屋に入って、彼女の歌を聴くこともある。
ある日、平山とタカシが作業をしているとアヤが訪ねてくる。アヤのバイクが故障したため平山のワゴン車に三人で乗るが、タカシは平山が後生大切にしているカセットテープを盗む。哀れんだ平山は自分の所持金をタカシに渡す。またある日、平山が仕事から帰ると、家出してきた姪のニコ(中野有紗)がアパートの前に立っている。ニコは清掃の仕事に同行して平山と親しくなるが、平山の妹(麻生祐未)が娘を連れ戻しに来る。その次の日、タカシから退職する旨の電話が掛かってくる。平山はタカシの持ち場も担当することになり、事務所への電話で怒鳴ってしまう。
ある休日、平山が居酒屋に行くと、店内で女将と見知らぬ男(三浦友和)が抱きあっていた。橋の下で缶のハイボールを飲みながら慣れないタバコを吸っていると、例の男が現れて離婚した元夫だと名乗る。癌が転移したと知って元妻に会いたくなったという。男が「影って重ねると濃くなるんですかね?」と言うと、平山は「やってみましょう」と返事をし、二人は互いの影を重ねてみる。男は「変わらないかな」とつぶやくが、平山は「なってるんじゃないですか、濃く」「何も変わらないなんてバカな話、ないですよ」と、男を慰めるように返答する。翌朝、平山はカセットテープ(ニーナ・シモンの代表曲『Feeling Good』)を聴きながら、いつものように公共トイレを目指す。顔には苦渋に満ちた哀愁が漂っている。
ある日、平山とタカシが作業をしているとアヤが訪ねてくる。アヤのバイクが故障したため平山のワゴン車に三人で乗るが、タカシは平山が後生大切にしているカセットテープを盗む。哀れんだ平山は自分の所持金をタカシに渡す。またある日、平山が仕事から帰ると、家出してきた姪のニコ(中野有紗)がアパートの前に立っている。ニコは清掃の仕事に同行して平山と親しくなるが、平山の妹(麻生祐未)が娘を連れ戻しに来る。その次の日、タカシから退職する旨の電話が掛かってくる。平山はタカシの持ち場も担当することになり、事務所への電話で怒鳴ってしまう。
ある休日、平山が居酒屋に行くと、店内で女将と見知らぬ男(三浦友和)が抱きあっていた。橋の下で缶のハイボールを飲みながら慣れないタバコを吸っていると、例の男が現れて離婚した元夫だと名乗る。癌が転移したと知って元妻に会いたくなったという。男が「影って重ねると濃くなるんですかね?」と言うと、平山は「やってみましょう」と返事をし、二人は互いの影を重ねてみる。男は「変わらないかな」とつぶやくが、平山は「なってるんじゃないですか、濃く」「何も変わらないなんてバカな話、ないですよ」と、男を慰めるように返答する。翌朝、平山はカセットテープ(ニーナ・シモンの代表曲『Feeling Good』)を聴きながら、いつものように公共トイレを目指す。顔には苦渋に満ちた哀愁が漂っている。
『PERFECT DAYS』(原題:Perfect Days)は、2023年に日本・ドイツ合作で制作された長編映画です。巨匠ヴィム・ヴェンダースが、役所広司演じるトイレの清掃作業員の日常を、さまざまなエピソードを交えながら描きました。本作は、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、役所が日本人俳優としては『誰も知らない』の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞したほか[、作品はエキュメニカル審査員賞を受賞しました。また。2024年の第96回アカデミー賞では、日本代表作品として国際長編映画賞にノミネートされました。
本作は、もともと短編のオムニバス・ムービーとして企画されましたが、ヴェンダース監督の意向で最終的に長編映画として制作されることになりました。まず、誠実で寡黙なトイレ清掃員の名前が平山と決まりました。監督が敬愛してやまない小津安二郎監督の作品にたびたび登場するというのが理由です。それから、物語の進行上必要な挿話が加えられ、最終的に2時間強の作品に仕上がりました。撮影期間はわずか17日間ですが、ヴェンダース監督と役所さんは多忙を極めていますから、17日でもスケジュールを確保するのは大変だったのではないでしょうか。
ボクは、渋谷の映画館で観たのですが、ついでに公共トイレも見学してきました。大和ハウスが造ったという建造物は、キレイでしたが普通のトイレでした。さて、ボク等の世代だと、ヴィム・ヴェンダースの作品は、絶対に観なければならない映画でした。特に『ベルリン・天使の歌』(原題:ベルリンの空)はそうでした。当時、学生街にあった名画座では盛んに上映されていました。 『PERFECT DAYS』を観て、『ベルリン・天使の歌』と似ている部分がけっこうあるなぁと思いました。ヴィム・ヴェンダースは実にさまざまなジャンルの作品にトライした監督なのですが、本作はロマン派の雰囲気がよく出ていて、懐かしい感じがしました。この映画でボクがいちばん好きなシーンは、最後の15分です。役所広司と三浦友和の掛け合いが絶妙で、中年男の悲哀がよく表現されていると思いました。